追加連載の後半は、『ヒトの形』です。
本論文は第3回日本構造医学会京都学術会議にて発表されたもので、時系列的には
『ヒト前腕骨の形態と機能 : 単一の幾何学的概念(円錐面上の測地線)を用いて行った,生物の形態および機能設計(バイオメカニズム学会誌 Vol.13(1996))』のあとになります。(構医ジャーナル 2017/11/8 記事参照)
故・秋田研究員は、整形外科医としての臨床の傍ら、生物に見られるらせん形状の優美さに魅せられたことをきっかけに、幾何学によって生物の形を表現する研究を進めてきました。
本論文は、構医研所長より全身との関わり、全身各部位のピンニングとの関連から、それまでの成果をまとめるよう助言されたことを受けて書かれたものです。別種の生物同士の類似、あるいは同種の生物の各部の相似性や、形と機能との関連は人を惹きつけてやみませんが、秋田研究員の業績は、単純な連想や進化論的結びつけに留まることなく、厳密な数理展開を加え、原型を追及し続けたことにあります。
故・秋田研究員は、のちに一連の研究のきっかけとなるひらめきが生まれたときの興奮を、本論文の結びでこう述べています。「ヒトの前腕骨が円錐面上を逆回りに回るらせんで出来ており、それが数式で表されるのではないかということを最初に思い付いた瞬間のことは今でもはっきり覚えております」
晩年、秋田氏のひらめきは緻密な解析を経て、複雑な前腕運動をも表現する実学モデルへと開花しようとしていました。この仕事の最後の部分は
『2本の円錐面の測地線の転がり運動について —ヒト前腕骨の形態と機能2—』(構医ジャーナル 201/11/22)にて垣間見ることが出来ます。そちらも併せてご覧ください。
本稿で、秋田論文の追加連載を終了します。構医ジャーナルでは、今後も有用な知見を随時掲載していきます。