東京学術会議

令和最初となる第24回東京学術会議が10月13日(日)に開催された。
台風19号の関東直撃で東京への交通網がほぼ完全に停止する中、前回の東京学術会議を上回る166名が参加した。演題発表では10名の演者が臨床報告や診療者としての気づき、構造医学を通して得た洞察を披露した。
座長カンファレンスでは各演題がさらに掘り下げられるとともに、臨床者としての患者との向き合い方について活発な意見交換がなされた。理事長による臨時のエキシビジョンレクチャーでは参加者の中で不調のある方々に対してわずかな時間で施術を行い、その手技に歓声が上がっていた。
今大会では、事務局のスタッフの半数が現場に辿り着けない中で、実行委員・座長委員・また参加者の皆様のご協力とご厚意に支えられ実行できた。
当初は事前申込のみで会場の収容数を超える200名以上の参加表明がなされ、これは近年最多であり、その8割以上の人数が大変な荒天の中会場に駆けつけたことになる。また今大会は20代から30代前半の若い初参加者が多いことも特徴であった。まさに新年号の幕開けにふさわしい、「次世代」そして「結束」が示された大会となった。
被災され参加を果たせなかった皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、万難を排し盛会にご協力賜った皆様、そしてスタッフの不足と変則的なプログラムの中一人数役を担っていただいた座長・実行委員の皆様に深く感謝申し上げます。

演題一覧

京都府 柔道整復師 岡村 優輝

球曲面を有するステンレス製剛体を用いた軟部組織損傷に対する非観血的外科処置に関する報告

岡村氏は、指圧時に四指で手当てした経験に着想を得て、四つの球面をもつ金属器具を自作して軟部組織修復にあたり、一定の成果を観察した。氏によると本器具の特長は、治癒過程をエコーで患者と一緒に観察できる点、また自宅療養においても患者自ら器具を用いることで比較安定的にセルフケアを行える点だという。

質疑では、症例に取り上げられた右方形筋部の筋肉が長いことから押圧部によって損傷程度や圧力分布に(当然に)大きな差異がある点について所感を問われ、その問題についての事実上の解決法がなく部位観察を重視したと答えた。また、圧力分布について球体の中心に集まる原理を問われ、図を用いて概念的な説明を加えていた。

座長や理事長からは「対照群の検討」といった科学の基礎的手法を踏襲することで、より質を高められるとのエールを受けていた。

東京都 鍼灸指圧師 三島 茂

足もとを見直す(6)

三島氏は臨床者としてW.B処置後に非荷重や腰・膝の症状が戻ってしまう事例に悩んだ経緯から、間接的に非荷重を整復する方法を摸索し、その6回目の継続発表がなされた。

氏は歩行において踵接地→足底接地→趾離地と推移する中で距骨が下腿の内旋ひいては寛骨を動かす運動系の原動力であるとの考えを示し、W.Bに適切な荷重を加える上での理想的な歩行法や軟部組織改善についての提案がなされた。

質疑では吉田理事長から、発表資料(論文 図10)について、まず二足ジャイロ機構が機能するには図のような対頂双円錐でなく極尖双円錐であること、そして大腿骨の回旋の「受け」が末端まで大きく振れないよう距骨が大腿骨頭と相同した角度になっていることについて指摘があった。前者について三島氏は、寛骨のサイズ感の表現であると説明した。

東京都 柔道整復師 佐藤 健司

街の整形外科・リハビリテーション科における臨床雑感

進行し続ける超高齢化社会において、全ての臨床家はこれまで以上に高齢者、後期高齢者を診る機会は増えていく。

佐藤氏は整形外科・リハビリテーション科医院に勤務する柔道整復師として得られた気づきや感じたこと、普段の臨床業務の中で患者と向き合い、信頼関係を築き、平癒に導く過程で留意していること等について、高齢者の特徴を交えながら共有し、これからの時代における医療者の在り方についての問題提起を行った。

座長カンファレンスでは、特に患者との向き合い方、信頼関係の構築について意見を共有し、議論された。

熊本県 柔道整復師 市原 周篤

硬膜脳髄反射における検証と考察について

日本構造医学研究所員の市原氏は、吉田 勧持氏が発見し、講座等において度々取り上げられる硬膜脳髄反射及び頭痛と脳変位の関連性について、臨床例をまとめ、MRIやCTで画像評価できない脳変位への打診法の有用性と、硬膜脳髄反射による愁訴改善が報告された。

具体的には、「打診法による脳変位検索と臨床症状の整合性(16名)」、「臨床症状と構造医学スクリーニングテストの整合性」、「スクリーニングテストとレントゲン画像所見の整合性(13名(※))」を合わせて行い、12名に臨床像と検査の整合性が確認された。すなわち脳変位―スクリーニングテスト―画像所見が一本の線で結ばれる整合性が認められ、硬膜脳髄反射の存在が強く表現されていることが判った。
うち10例はデュアルサイクローターにより臨床症状の消退・軽減が認められ、叩打音の均衡化が確認された。

(※)3名は事情により撮影できなかった
神奈川県 柔道整復師 原⼝ 誠

術の根拠を求める(脊柱非観血外科処置台構造が示唆する生理的脊柱整復とは?)

原口氏は脊柱非観血外科処置台の構造分析から、まず胸部支持台の傾斜30度が循環動態を担保する角度だと紹介した上で、粉体工学上、粉粒体が自壊せず安定する最大傾斜「安息角」に近いことから置性-吊性系の境界角だと推理し、腰椎の椎体荷重性を弱め椎間関節荷重性の安全条件を作る角度だと見出した。また立位時のリンケージが複雑化した症例(例:前後逆位相の障害)において本処置台では上体重心前後の複雑性を打ち消しシンプルな障害形態に還元できると述べた。また自身の開腹手術痕の痛みが唯一解消したのが本処置台上での安息であったことが明かされた。

処置台の粘弾性(変位だけでなく速度に比例して抗力が増す性質)を考慮して、軽い一定の加圧深度を保持することでレオロジー特性が活用されると説いた。原口氏は「技の行使に気を取られがちだが、まずは患者状態を把握し、次に術者の構えなど安全性を担保することが大事」と訴え、その実技例を紹介した。

東京都 柔道整復師 ⼩川 宏

構造医学から学んだ問診法と人の診⽅(人を診ることに重きを置いて)

小川氏は構造医学講座で学んだ「患者の人生の物語がある」という言葉に契機を得て、それを体現できる問診法を模索してきた。発表では院長として自院で実践している様々な工夫や配慮が紹介され、その意義と目的が具体的に伝えられた。疾病形成因子の大多数は目に見えないこと、患者が仮にその疾病形成因子を理解しなかったとしても、構造医学なら平癒に導く術があること、距離を大事にしつつ情熱を持つことなど、小川氏の医療者としての心構えが述べられた。

質疑では患者のわずかなしぐさ、様相、表情などからいかに読み取り診療に活かしているのか、また処置の際の留意点を問われ、「患者に合わせて態度を変えず、ガラス窓越しに院に入る前の様子から問診に至るまで観察し、会話の中で患者が変化するポイントが重要」、「被術衣への着替えを促したり、検査で体に触れる際もすべて前もって言葉をかけることが大事」と回答していた。

東京都 獣医師 ⻄川 めぐみ

地表導電による状態の変化とその考察

「アースをとる」という構造医学講座で頻出する言葉に触発された西川氏は、多数の協力者に自作したアーシング器具等を使用してもらい、体感であるが、睡眠の質や喘息、腰痛の軽減、脱肛の低減、むくみの解消、アトピー性皮膚炎の軽減等様々な実感を得たという。

また、獣医師である氏は自身の飼育する犬や猫に試験し、てんかん発作が一度も起きなくなる、角膜白濁化が軽快したなどの変化を観察し、動物ではプラセボ効果が排除される点を併せて指摘していた。

アーシングの作用原理については「電子の補給」といった仮説が既に提唱されているが、氏は構造医学や物理学の観点及びTCA回路や電子伝達系を踏まえ「(正負)を問わず滞った電荷を流す」という面から説明した。

菅沼病院リハビリテーション科で構造医学的に診療した内科患者の症例

台風災害により菅沼氏の出席がかなわなかったため、日本構造医学会理事長 吉田勧持氏の解説を記載する。

まず初めに、この論文では不定愁訴や内科・小児科で異常なしとされた、また治療が奏効しなかった患者に対して構造医学的な診療を行った症例報告が行われている。

愁訴・症状・病態は患者によって異なっているが、菅沼氏による治療の流れはほぼ同じことを行っている。これは診療者である氏自身の既往歴から各症状に細かく注目するのではなく、体の全体図を見て多彩な症候に対処したということである。

診療者が患者の個々の症状・問題に対峙することは大切なことだが、見失いがちな全体像に着目して診療に臨んでほしいと結んだ。

岡⼭県 柔道整復師 ⼩川 英史

リウマチ1症例

小川氏は慢性関節リウマチ患者一名に構造医学処置を施し、疾患自体の消失はみないものの疼痛軽減、免疫向上、マイナス思考の低減、脱薬に至り日常生活が改善した。

氏は疾患への根本的対処が免疫寛容の再確立であるとみなし、損傷因子を排除することを念頭に各処置を行った。症例報告にあたって、患者本人の主張そのものであるため科学的根拠はないと前置きした上で、実践した処置(各疼痛部位への整復及び冷却、構医本草食品指導、生理歩行指導、ストレス緩和指導)を取り上げて、それらの作用概念について細胞生理と免疫損傷因子等の観点からひとつずつ丁寧に説明を行った。

兵庫県 理学療法⼠ ⼭本 泰司

一般総合病院に勤務する理学療法士の立場からの構造医学の展開

山本氏は一般病院勤務の理学療法士として、指示系統の中で現代医学と構造医学の協調を図りながら業務に当たっている。

今回は治療法が確立していないAARF(環軸椎回旋位固定)の小児3症例について、現代医療で推奨される牽引療法等が行えないケースで構造医学の考え方を取り入れた処置(頭軸圧法等)を行い、牽引療法が適用された他験1例と比較して報告した。
なお、症例3については患児が協力的に身を委ねたことから頭軸圧法による整復がほぼ10秒程度で完了しており、小児期における拘束と負担に関して座長カンファレンスでは議論が深められた。

座長カンファレンス

座長カンファレンスでは各演題発表に端緒する活発な議論が繰り広げられ、非常に実りある時間となった。ここではそのごく一部を紹介する。

  • 市原氏の発表に関して、打診器の種類について質問があり、ヘッドの素材として理想的な素材(銅か真鍮)や自作方法についての議論があった。

  • 岡村氏は道具形状の着想について経緯を説明した。座長と理事長から今後の研究と発表の手法についての具体的なエールが送られた。

  • 西川氏は地表導電についてデメリットを尋ねられ、今回の事例では1件、少しグラッとした例があったが、あとは良好な報告が多い、効果の継続性についてはさらに検証が必要と答えた。
    理事長からは、物理学的に可視化・評価されているものはエネルギーベースで1~2%のレベルであり、地表導電はそうした世界が顕在化するひとつであるとの注釈がなされた。

  • 「術者の意識が道具の作用を打ち消す」という発言の意味を詳しく尋ねられた原口氏は、例えば直線的な構造の連列露盤をリダクターのようにテコを利かせて使用する例が散見されるが、なぜ連列露盤が直線構造になっているかを考えてほしいと、具体例を挙げて示唆した。
    理事長からは構造医学の道具についての総括があり、主張は何ら変えていないが、道具が変遷してきた背景について、言葉に囚われるヒトという種の宿命、少しの齟齬で諍いを起こし、外部に責任を転嫁する昨今の時代性を考慮して道具の様相を変えてきた。あとは類推してほしいと、聴衆に踏み込んだ思考を促した。

  • 患者への指導の工夫(長時間の歩行、高価な構医本草等)について尋ねられた小川英史氏は、毎日その問題を考えていると前置きした上で「難しくではなく簡単に伝える」「患者を一日でも早く復帰させたいという思いが伝われば伝わる」といった所感を述べた。
    理事長は医療費に対する日米のイメージの格差、つまり日本はほぼ無料(=国民が負担)、アメリカは超高額であり、今後具体的な問題として実は医療者に降りかかってくるので備えが必要、と警鐘を鳴らした。

  • AARFへのオペ後の予後について尋ねられた山本氏は、今回自験例にはないが、文献検索ではよくないと答えた。理事長は小児期の行動制限による代償行動、ハイパーモーション、拘縮といった問題点への指摘がなされた。

  • 三島氏の「股関節反力の減衰が非荷重を発生させていることを示している」というASの図に対し、質問者から「非荷重という状態が股関節反力の減衰を発生させているのでは」という逆の解釈が示され、理事長による新たな問題提起が加わって一段高い議論へと止揚された。

その他、複数の演者と座長が加わり、医療者と患者の信頼関係構築について具体的で活発な議論が交わされ、さまざま状況を抱えた医療者の迷いに呼応するような体験の場となった。

理事長エキシビジョンレクチャー

今年度初の試みとなる理事長エキシビジョンレクチャーでは、日本構造医学会理事長 吉田勧持氏による構造医学の成り立ちや診療の在り方の解説や、実際に頭痛や歯痛などを抱えた参加者への手技の披露が行われた。
さらに原口氏の演題を交えながら、構造医学の療具を用いた実験・検証動画を映し出すと、会場では前のめりになって見入る様や、ペンを走らせる姿が見受けられた。

  • 学会長 / 実行委員長
  • 八戸 正己
  • 実行委員
  • 阿部 純市
  • 神田 大輔
  • 酒井 祐介
  • 玉村 裕美
  • 鶴田 仁
  • 殿川 将吾
  • 西山 昭弘
  • 野口 裕紀
  • 山下 ゆ可里
  • 座長委員
  • 林田 一志
  • 小笠原 宏之
  • 落合 弘志
  • 鬼丸 聡
  • 柴田 宗孝
  • 田所 生利
  • 松村 圭一郎
  • 森 正仁
  • 湯澤 眞