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ヒト歩行モデルの研究における構造解析の学習

ヒト歩行モデルの研究における構造解析の学習

2019.07.24

この論文ではヒトが二足歩行をする際のメカニズムをロボットで再現することによって、歩行解析を試みている。構造医学が発見した、直立二足歩行の重要な要素である恥骨クランク及び二足ジャイロ機構を再現したロボットは、歩行を達成できなかったが、転倒の様子から著者は膝関節に着目した。

構造医学を通して、膝関節が屈曲伸展を行う際に、回旋運動によって衝撃を逃がしていると学んでいた。ロボットに回旋運動の機構を実装していなかったため転倒を引き起こしていたと考えた著者は、医局員の協力のもと、通常の歩行と膝の回旋を固定した際の歩行を撮影・比較した。回旋運動が不全時の歩行には「足が離地する際に外側へ跳ね上がる現象」が確認でき、これは頻繁に転倒する人工膝関節を装着した患者にも同様の現象が見られた。

ロボットで再度転倒の様子を確認したところ、膝の回旋運動(回旋自由度)の機構を持たないロボットと、同じく膝の回旋自由度の低い人工膝関節の患者や医局員は転倒の様子に相似している点が存在していた。これを基に膝関節の回旋運動がなければ足底反力を受けきれずに転倒することなど4点の考察をまとめた。
歩かせることのできなかった歩行ロボットの転倒動作の中にヒトらしさを見つけ、実際の患者の動きや人工股関節の課題を見出すに至った研究である。

< 出典 > 著 者:落合 弘志(日本構造医学研究所付属臨床医療センター・熊本県)
掲載誌:日本構造医学会編:季刊構造医学 第47号,2007.6.10
(所属・肩書等は発表当時)

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