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【所長寄稿】新たな情報技術の開始について思うこと

【所長寄稿】新たな情報技術の開始について思うこと

2020.04.15

構医ジャーナル特別寄稿

新たな情報技術の開始について思うこと

次世代移動通信システム(5G)は、ミリ波暴露による危険性の検討が十分になされていないとして、ベルギーの首都ブリュッセルやその他欧州諸国では既に実験と導入禁止措置が発表され、イタリア政府は既に使用制限の裁判所の決定を告知し、スイスのボード市、アメリカのサンフランシスコ市でも同様の決定がなされている※1。他方、わが国では危険性の指摘が十分に議論されないまま、2020年より運用が開始されるという対照的な事態となっている。
構医ジャーナルでは、高エネルギー物理の専門家として電磁気学に詳しい吉田所長にこの問題を尋ねたところ、寄稿をもって回答されたため掲載する。


令和2年4月
日本構造医学研究所 所長 吉田勧持

現代社会において、人類は生息環境の領域を広げ、その結果生物間における棲み分けは事実上破綻し、動物からの病原微生物やウイルスとの遭遇の機会が増え、安定した社会の構築を揺るがす事象が今世紀に入って多発している。


かのレイチェル・カーソンをはじめとして、苦渋の轍を通った文豪たちはその折々に生じた事象と精神世界における不安、社会機序の破綻などに警鐘を鳴らし、時に誤った意味での宗教性を帯びるテクノロジーや便利さへの信仰を省みて自分自身を見つめることや他との関係をもう一度深く考えることを示唆したのであるが、我々人間の思考の趨勢として、「喉元を過ぎたるものはすぐに忘るる」精神はいまだ何一つ変わらず続いており、寺田寅彦先生の仰った「天災は忘れたころにやってくる」や「正しく恐れろ」という教訓が活かされているとは言い難い。

アルベール・カミュは、世界を覆う厄災の、その影を隠れ蓑として将来に禍根を残すような民主主義的要素の破壊や、見えない負荷を醸成する社会基盤を構築する思想の暗躍に警戒し、全知全能を使って思慮深く考察と抵抗を加えなければならないことを著作「ペスト」の中で表わしている。


ここで、今世界中で進められている情報伝達の高速化や、量の無尽蔵化は、当然その媒体となる電磁場の量体を広げる試みであるという事実を理解しなければならない。しかし、そのような科学技術の行使にあっては、我々人間を含む生命体の安全や、長期の侵害性の排除を前提としていなければならない。

しかしながら、グローバル化し、言わば小さくなった地球では各国の利己的思惑によりこれらの検証が十分になされないまま実施される危険性が増大していることは、近代史に繰り返された災禍の教えるところである。


近未来において人間生活の有用手段とされる大量高速情報通信網は、日本において28GHz までのミリ波を使用するが、これはいわゆるマイクロウェーブ領域の電磁波帯であり、その生物学的影響は未だ安全性を含めて確認されていない。我が国でも行政や各種研究機関において調査が継続されているが、その結果が出る前に運用が始まったことに危惧を感じる次第である。
なぜなら、人体を含む生命体は、その細胞単位におけるまですべていわゆるコンデンサー機構が内在しており、このような電磁波を許容する量は限られている。その中にあっても現在確かめられようとしているのは、電磁場による誘熱作用のみであるが、それ以外にも電子類を含むレプトンの挙動は全くと言っていいほど解っていない。


一つの例として、核融合反応の最も有力な手法であるトカマク法は、トーラス電磁体によるプラズマの封じ込めによりプラズマ電子温度を高温の領域まで持って行き、重水素・三重水素により核融合臨界温度を達成し、地上における融合の火を達成しようとするものであるが、この実験過程でひとつには、ハロー電流の強力電流形成により周辺容器(真空)の破壊が起こり、外部への漏洩が生じる現象や、内部輸送障壁の発生によって温度勾配の不規則性が惹起され、一部ではトーラス電磁体であるトカマク設計の容易化が起こる反面、プラズマ運動の交流的作用、収束と噴出の発生が起こり、渦流性にプラズマ流が発生して制御できない現象が起こる。


場は異なるが大量のミリ波が人体、特に脳を含む脂肪組織に注がれた場合、容器である頭蓋や人体隔壁内では、電子流、陽電子を含むレプトン流の渦流化が起こり、本来であれば神経系のニューロンシステムによって制御されている電子流に異常を来たしたり、それらの影響下で制御されているホルモン分泌に異変が生じ、あるいは生殖機能のかかわる各種形質にも異変を起こさないとも言えないと考えられる。
事実、化学物質による異変は、塩基などの化学構造をRNAやDNAの一部要素と置換することで、製薬的にウイルスの増殖抑止や駆逐に活用されているほか、為害行為としては生物種の絶滅・交配機能の消失、あるいは奇形の発生など、非常に大きな脅威となっている。
このような例をみるとき、我々は新たな技術の採否については、慎重にも慎重を重ねて対応する必要があるのではないだろうか。


構造医学は、地球環境問題と医療者の役務について長年考え続けてきたのであるが、ここ三十年の間に起こる天災や人災から引き起こされるであろう新たな病気の出現に憂慮し、皆様にもこのようなコロナ災禍のその陰で進行する問題について、真剣に考え続けて頂きたいと願う次第です。


※1 “5G、重大な健康被害示す研究相次ぐ…世界で導入禁止の動き、日本では議論すら封印”.ビジネスジャーナル. https://biz-journal.jp/2019/11/post_126809.html

日本構造医学研究所所長

吉田 勧持 (理博・医博)

専門はプラズマ・界面物理・臨床解剖学。主に物理・工学・医学を学際領域とした構造医学を創設し、40年近く臨床を続ける傍ら、数々の研究を行う。教育活動にも熱意を持って当たっており、80年代より構造医学の正規講座ではのべ2万人近くを指導する。 1148名の学会員を擁する日本構造医学会理事長。空手道8段。