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網膜色素変性症と頭部冷却療法

網膜色素変性症と頭部冷却療法

2019.02.28

網膜色素変性症とは、日本では数千人に一人の割合で発病する難病であり、夜盲、視野狭窄、視力低下が特徴的な症状である。発症の時期は様々で、高齢になってもある程度の視力を維持する症例もあれば、壮年期頃には視力を失う例も存在する。
患者(女児・11歳)は3歳で網膜色素変性症の診断を受け、10歳時に本人を前に「将来的に必ず失明する」旨の宣告を眼科医からなされた。著者(歯科医)は女児の母親の歯科治療を行っていた経緯から網膜色素変性症について相談され、母親の申し出を受けて、女児への生理冷却療法を開始した。
具体的な診療内容は、頭部冷却装置(クライオサーミア)による1時間の生理的頭部冷却に加えて、家庭でのウェイトベアリング体操、就寝時の氷冷、姿勢指導及び生理歩行である。開始直後より視野中の暗点の減退やQOL改善が見られ、2年後の眼科での定期検査では視野狭窄の改善が確認された。
以上が2000年に第5回日本構造医学会で発表された内容である。
構医ジャーナルではその後の経過を把握するため2018年10月に著者への電話による聞き取りを行った。著者(木原氏)によると、患者の転居をきっかけとして以前のようなコントロールを離れたものの、2018年10月現在でも患者との交流は続いており時折挨拶にこられている。患者の病状としては、夜は見えづらいものの日常生活に何ら支障のない視力・視野を維持しているとのことであった。
< 出典 > 著 者:木原 弘隆(歯科医師・北海道)
掲載誌:日本構造医学会編:季刊構造医学 第21号,2000.12.10
(所属・肩書等は発表当時)

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