今年はようやく、出口に差し込む光が見えそうな心持になれましょうか。石の上にも三年。この数年、地球規模で皆一緒に見てきたつもりの景色は、実はこじんまりしたスクリーンを限られた人たちと眺めていたに過ぎないのかもしれない…と気付くには十分な月日が流れたように思われます。皮肉なことに、収束が朗報になる人もいれば、かえって旨みが減る人もいるのが現実のようです。
類を見ぬ災禍に見舞われますと、つい藁にもすがる精神に陥りがちですが、どのような状況下でも、自分に出来ることしか出来ません。正確な情勢の把握も困難を極めつつあります。いたずらに翻弄され早計な決断に至るより、石の上に座って待つ方が得策であったと後々判明するケースもあるかもしれません。
何をすべきか解からない状況にある時こそ、目の前の日常を丁寧かつ粛々と重ね、普遍的価値あるものを積み上げておきますと、難過ぎ去りし後もその蓄積は淘汰されることなく、終生役に立つのではないでしょうか。素朴で身も蓋もない話でございましたが、これも構造医学を通して見える世界観の一部であるかと存じます。そして今年の学術会議も普遍的価値の模索に熱心な面々がそろい、期待に胸が躍ります。今年は7名の演者が各々の知見・報告を展開して下さりますので、ぜひご期待下さい。
改めまして日本構造医学会はおかげさまで本年も、第28回目の学術会議を東京の学士会館にて開催できる運びとなりました。今年の学会長は原口誠氏に就任していただく予定でございます。難を希望に換える同氏のエネルギーには、たいへん励まされます。また林康夫副学会長の補佐をはじめ、実行委員ならびに座長委員の皆様のお力添えを賜り、充実した会議にできますことを祈念いたします。
さらに今年は一般財団法人構医研究機構 理事長の林田一志氏による教育講演も初の試みとして企画しております。タイトルは「足部の捻挫とその背景について」となります。同氏の柔和な語り口に包まれながら、足元にスポットを当ててみませんか。皆様ぜひとも万障繰り合わせの上、ご参加頂けますことを心よりお待ち申し上げております。

今秋も いざ集わん 学士会館に。

Greetingごあいさつ

学会長挨拶 原口 誠

第28回日本構造医学会学術会議の開催にあたり、ご挨拶を申し上げます。新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、この数年間は様々な活動や集会が制限されてきましたが、現在はコロナの感染症法上の位置づけが「5類」に変わり、様々な制限が解除され平常社会へと急速に戻りつつあります。それ自体は望ましいことでありますが、同時にこの災禍によりお亡くなりになられた多くの方々の存在や、浮き彫りになった様々な問題、その対策の是非について、今後も検証してゆくことを忘れてはならないと思います。複雑反応系である生物を対象とする医学においては、短期的成果が必ずしも長期的有益な結果に繋がるとはいえない側面があります。構造医学の根底にある哲学においては、特に「時間」という概念を重要視します。
医学は日進月歩で目まぐるしく進化するため、新しい知識や技術を得ることだけに追われがちとなりますが、どれだけ多くのエビデンス(科学的根拠)や統計学的データを集めようとも、時間という歴史的検証に耐えた「事実」を超える安全性の根拠は存在しないのではないでしょうか。
本学会は、現場に従事する臨床者を主に構成され、各々の「実体験に基づく事実」の発表を尊重しています。
個々の臨床者が得られる経験や研究成果には限界があり、エビデンスの不十分な意見や、現代科学では真偽判定不可能な体験報告もあろうかと思いますが、大勢の知識や経験をもとに議論と検証を重ね続けることで、今後さらなる科学の進歩に伴い解明されていく可能性があり、また個の経験知から集合知へと昇華されていくことも期待されます。今回も、臨床現場からの貴重な報告発表が予定されておりますが、皆様と共に拝聴し、忌憚なき意見交換が行われる有意義な会となることを願いますとともに、微力ながら学会長として尽力させていただく所存です。最後に、日本構造医学会の今後益々の発展を祈念し、ご挨拶とさせていただきます。

理事長挨拶 吉田勧持

第28回日本構造医学会東京学術会議の開催につき一言ご挨拶申し上げます。当学会は本年で第28回の開催を数えるまでになりました。
これもひとえに会員皆様の情熱とご協力の賜物であると思っております。当学術会議は患者各位に最も近い皆様方が、日頃より感じておられる諸問題を胸に様々な視点から見つめ、多くの臨床者や仲間達と共有すべく、この場に臨み発表せんと、熱意を持ち寄り成り立っています。
時には一般の医学的知識とは異なる見解が発表される場合もあり、また他方では深思考のレベルまで昇華された論文も存在しています。
しかし時代性においては誰もが確定的なことを言えない風潮となり、統計確率論を基に有用性を判断した数学的対応が、公式回答として求められる傾向にあります。
本来、臨床医学はあるいは医療の現場では観察科学を主体とし、実験科学をその補足として物事の方向性を計ることが、長い人類史において用いられた手法であります。一方現状は、ある場面で要素抽出比較あるいは全事象比較といった立場をとるものの、一部の薬理問題を扱う場面以外では自然科学で最も大切となる対照性問題を取り扱っておりません。
ゆえに、構造医学では常に対照性問題の存在を考慮しつつ、現実の問題に対峙するわけです。簡単に言えば、「患者各位の実態に寄り添う」という事です。そのような立場にいる発表者各位が、日夜奮闘されたその粋を発表されるものと信じております。
今回の学術会議では、林田一志先生の教育講演が行われます。講演の中からは、学び考え続けることこそが自身の臨床を築く礎となるという事を感じ取っていただけることと思います。
本年も学術会議へ参加される皆様が、多くの学びを得る有意義な時となりますことを祈念いたします。
最後に、並々ならぬ覚悟をもって学会長の任を受けて下さった原口誠会長をはじめとして、学会運営に尽力してくださる実行委員・座長委員、ボランティアスタッフの皆様方に、心より御礼申し上げます。

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